ドラッカリアンの間でもあまり話題に上がることのない、この往復書簡ですが、中央図書館に行ったら置いてあったので、さっそく借りてきました。けっこう面白いと思ったので、簡単に紹介しておきます。
ダイエーの中内さんとドラッカーが、ファックスでやりとりした内容をまとめたもの。”Drucker on Asia”として英語版も出されています。時期的にはちょうど阪神大震災の時で、地震が起きた当日にドラッカーから中内さんに宛てたファックスの内容も収録されています。
中国について
特徴としては、まず中国の発展についてかなり突っ込んで考察している点です。結論から言うと「中国には大きなリスクもあるが、大きなチャンスもあるので、進出しないという選択肢はない」としています。中国のバブル経済が崩壊する確率はかなり高いと言っていて、その点は現在まで大きなインパクトをもたらす崩壊は起こっていないので、中国はうまくやっているということなのかもしれません。ただ、バブル経済であることは間違いないので、宿命としてある時点で必ず崩壊するだろう、ということは強調されています。また、中国経済の発展に、華僑や華人といった人たちが、大きな貢献をしてきたという指摘も、ドラッカー独特のものだという印象を持ちました。
教育について
日本の教育が詰め込み主義でダメだということは、日本人なら言うまでもない問題点なんですが、ドラッカーは全然そうは見ていません。ここが面白かったです。日本の教育制度を嘆く中内さんに対し、
まことにぶしつけではありますが、まずはじめに、あなた方日本人が日本の教育について口にする批判は、いつも私にとっては理解しがたいものであるということを言わせていただきます。
日本の教育が没個性な人間を生み出しているのではない、受け入れる社会…つまり教育の外の問題だというのですね。日本の雇用システムが、第二次大戦後の大学進学率の大幅な上昇という現実に対応してこられなかった、それだけの話だというのです。
2010年までに物価を二分の一に
びっくりしたのは、この時点でのダイエーの目標が「2010年までに物価を二分の一にする」というものだったんですね。現在、日本は「デフレ」であるとされていて、デフレを克服するためにマイルドなインフレを起こさなければならない、といった論調も目にするんですが、もともと狙ってやっていたのか!という感じです。なぜ物価を下げなければならないか、というと、日本の生活コストが高すぎるからだ、という認識です。ボーダレスになってきている経済において、生活コストが高いと競争力を失います。
すなわちそれは、日本は、競争力をもつためには、他の先進国よりもコストが高くてはならないという認識です。
そして、いかなる国においても、最大のコストは賃金ではありません。それは、賃金によって買うもの、すなわち生活コストです。この点において、今日の日本には競争力がありません。
こういう認識があったというのは驚きでした。そう考えるとユニクロにせよニトリにせよドンキにせよ100円ショップにせよ、生活コストを下げる手助けをする企業が受け入れられているんだな、という感じですね。偉い学者の先生が何を言おうが、現実の社会ではグローバル競争に耐えられるように自ら変化していっているんじゃないでしょうか。
その他、経営やイノベーションといったトピックは、他の本で展開されているものと重複している部分も多いです。中内さんを相手にしているから、ということもあるのでしょうが、流通が日本において果たした役割…非生産的なパパママストアを、コンビニに変えることで近代的で生産性の高い店舗に変身させることに成功した…を高く評価しています。
中内さんは、ダイエーがうまく行かなくなって、経営者としての評価は最後あまりよくない印象ではあるのですが、少なくともドラッカーはめちゃくちゃ読んでますし、とらえ方も適格だなと感じました。この本読んでだいぶ印象が変わったので、色んなものを読むことは必要なんだな、と思いました。


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